さらっと出てくるノブレス・オブリージュ
今週も色んな人と会い、話し、多くを学んだ週でした。経営者の方々の言葉から学びつつも、相手に対して私が提供できる場面が少なく、悔しくなります。
私は普段から耳を傾ける側で、意見はあるけれど口下手で、喋りが上手い経営者相手では差し込みが難しい場面が多いです。毎回、折角お会いするからにはまた話したいと思ってもらえるような言葉をほんの一言でも伝えられるようにとは考えてはいますが、達成できずに悔やむことばかりです。それでも、再び会うことを丁寧に望んでくださる方もいて、私の聞く姿勢が経営者にしては珍しく、それで相手が喜んでもらえるのであれば、カーネギーの「人を動かす」を読む価値はあるなとも思います。
たった一言だけ差し込めた時、それが的を射て的確で、かつ魅力的な言葉で伝えられるような人になりたいです。会話の中で、その場を的確に表して会話を前に進める言葉の一つとして、さらっと「ノブレス・オブリージュ」を使った方がいて、こういう語彙力と会話の訓練を積まなければならないと感じました。
マネジメントって何?
一方で、広い意味を持ちすぎて曖昧なカタカナ用語を忌み嫌う方もいました。例えば「マネジメント」という言葉は物事の本質を見えづらくしてしまうので「マネジメントという言葉を社員が使うと具体的な言葉に置き換えさせる」ということを聞きました。たしかに「マネジメントが大変なんです」と言われた時のぼんやりとした課題の見えなさへの疑念は拭えません。「部下との1対1で日常業務について話す時間」が大変なのか、「評価の記入」が大変なのか、「顧客との相対スキルの教育」に苦労しているのか。広い意味を持ちすぎている曖昧な言葉は議論の焦点がずれがちで、私が「シンプル」を避けさせることと同様( 56通目 )、課題の言語化を阻んでしまいます。
その場を適切に表す語句と、議論を停滞させてしまう語句。一言一句丁寧に扱いたいと感じた週でした。
200人の壁に立ち向かえるか
300人以上の組織を見る経営者の方から「200人を超えるときは結構辛かった。(規模が大きくてやることも増え)自分が(1メンバーとして)動けなくなるから、人に任せて進める必要がある。」という話を聞きました。100〜150だと、経営者が個別に呼びかけ現場を動かす余地はまだあり、許される。しかし、200人規模ではいよいよ自分が動くことはできなくなり、いかに組織として誘導できるかにかかってくる。というような旨のお話でした。元々エンジニアとして手を動かしていた方のお話で、説得力があります。
組織の規模の拡大に合わせ、会社の最適な回し方は刻々と変わります。企業を成長させるためには、今の規模に合わせた形の立ち回り方ではなく、次に目指す規模を常に想像しながら動く必要があるようです。150人の進め方で200人までいくのではなく、200人、300人規模を見越した組織体制を検討し、自分自身の立ち振る舞いも早めに切り替えていけるよう努めます。
今週の本
電通のことを深く知ろうと手に取った電通関連の2冊め。
電通の四代目社長である吉田秀雄のことが多く書かれているのかと思いきや、著者の持論ばかりで、というか電通出身の人でもなく、あなたは誰…?と言わざるを得ない内容でガッカリして終わりました。
電通は現在、過激な表現があることを理由に、電通「鬼十則」の社員手帳への掲載を取りやめています。そうだとしても、「殺されても放すな」という表現以外は真っ当で素晴らしく、仕事に取り組む姿勢として見習うべきものです。
電通「鬼十則」
1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
電通は「鬼十則」ばかり目立ちますが、同様に「責任三カ条」も出していました。
電通「責任三カ条」
1. 命令・復命・連絡・報告は、その結果を確認しその効果を把握するまでは、これをなした者の責任である。その限度内に於ける責任は断じて回避出来ない。
2. 一を聞いて十を知り、これを行う叡智と才能がないならば、一を聞いて一を完全に行う注意力と責任感を持たねばならぬ。一を聞いて十を誤る如き者は百害あって一利ない。正に組織活動の癌である。削除せらるべきである。
3. 我々にとっては、形式的な責任論はもはや一片の価値もない。我々の仕事は突けば血を噴くのだ。我々はその日その日に生命をかけている。
実はこちらの方が過激です。人に対して「削除」という言葉が使われ、今の時代に出ていたら惨憺たる状況に追いやられることは容易に想像ができます。しかし、鬼十則同様に書いてあることは理解でき、こうした声明は会社の個性を強くするため、過激な書き方を理由に企業のアイデンティティが失われることは勿体無さを感じます。
「鬼十則」も「責任三カ条」も、内容は大好きなので、柔らかくして社員に伝えてみたい。
今週の写真
銀座メゾンエルメスのギャラリーで行われているダイアログ2「つかの間の停泊者」の展示を見に行った際の写真です。ニコラフロックの海底の白黒写真の作品は見応えがあります。
写真撮影する際にスッと移動してくださる監視員の方々の気配りには頭が上がりません。
今週の音楽
Overgrown - James blake
今週話した知人が好きな James Blake。いくつもアルバムを出していますが、アートワークも含めるとこの2013年のアルバムが好きです。
今週のアプリ
韓国の個人開発者が作成している、オリジナルの単語帳を作成できるアプリです。
自分の語彙力を増やしたく、本を読む際に出てくる難しい単語(縷縷や謦咳、紊乱など)を登録して覚えていきたいと思い、単語帳アプリを探しました。QuizletやAnki、Anki Pro( Ankiとは別物 ) など、単語帳ジャンルのアプリをいくつも調べた結果、Onevocaに行きつきました。
単語帳のアプリは調べていくと、学校との連携ができたり、画像が登録できたり、他人の単語帳を見られたりと、機能は多いが複雑なものばかり。良いアプリは「目的が一言でいえる」べきだと改めて思わされました。
Onevocaのいいところは、自分が登録する単語帳を見ることに特化しており、他人の情報が見えないところです。学習に集中させることが目的なのに、気が散る情報を出すアプリは本末転倒ですね。
今週の映画
レッドドラゴン(10点中7点)
ハンニバル・ライジング(10点中2点)
パニック・ルーム(10点中6点)
ハンニバルレクターシリーズ、4作全部見切りましたが1作めがダントツで一番楽しめました。特に4作目「ハンニバル・ライジング」の謎の日本感には萎えました。原作も不自然な日本だらけらしく、見なければよかった。
「パニック・ルーム」は、好きな映画監督のデビッドフィンチャーの作品です。通常の撮影では不可能なCGを用いたカメラの動き(ケトルの持ち手をカメラが通るような動き)が不気味な印象を出して盛り上げています。たまたま見たら、「羊たちの沈黙」のクラリスが母役で出ていて驚きました。
語彙力を増やしたい。
おやすみなさい、良い夜を。