月曜日が祝日だったにも関わらず、恐ろしく忙しい長い週となりました。株主総会に取締役会、名古屋出張に新潟出張と、1ヶ月分くらいの長さに感じた一週間でした。前回のsubstack が遥か昔に感じます。1日1日が長すぎる。
新潟で開催された、社会人向けの新事業提案イベントに、僭越ながら評価者として参加しました。参加者に対して半年前に「デザイン経営」を実践する講師として講演しており、今回は広い意味でのデザインが活かされた内容か確認し、コメントしていきました。
「自分の娘が起業家と結婚するなんていったら大反対だね」
同じように評価者として参加していた別の経営者の方とお話する機会がありました。輝かしい経歴の持ち主でも、経営が大変でハードシングスは一通り経験したこと、自分が経営に向いていないと思うことなど、意外な面が見られたことに安心感を覚えました。
講評前に「下手なビジネスモデルだったら起業を止める」と話しており、この人は信頼できる人だと感じました。今の日本では起業が持て囃され、輝かしいイメージばかりついていますが、本当に誤解だらけです。起業家や経営者は心を病む人も多く、成功する一握りのベンチャーは、夢に敗れた人たちの屍の上にいます。
「どうやって心を保てていますか?」と問われ、私の場合は「美術館で一人の時間を確保すること」と答えましたが、今こうしてsubstackに向かう時間も、自分が心を崩さず日々に向かえている大きな支えになっています。自分を保てる場を見つけて持ち続けること、それこそ経営者に求められる条件かもしれません。
取締役会と私
話は変わります。恥ずかしいお話ですが、これまで取締役会に臨む際は、日々の業務を優先してしまい、受け身で音読に近い進め方をしてしまう部分がありました。しかし、当たり前のことから逃げている自分があまりに情けなく、このままではまずいと思い返し、気持ちを切り替えることにしました。取締役会が会社の決定を行う最重要の意思決定機関であることを意識し、自分が主人であり手綱を握る人である自覚を持ち全時間を臨みます。
宣言したからには、少しずつ変われるように努力するぞ。嘘はつかない。
今週の写真
東京都現代美術館で開かれている展示「豊嶋康子 発生法 - 天地左右の裏表」の写真です。以前から作品の一部を別の展覧会で見かけたことは何度かありましたが、大規模な個展の形で一斉に作品をみた時の印象は圧巻でした。
作品それぞれの外観は幅広いものですが、それらはいずれも、いわゆる既成の仕組みや枠組み、順列などに対して、脈絡を守りつつ「私」を用いて別の見方を挿入し、本来の意味作用を逸脱させ、歪ませ、反転や空回りをさせることで、その構造と私たちの認識や体験の「発生」を捉えようとするものだといえるでしょう。
(東京都現代美術館)
初期から新作まで、どの作品も一貫した魅力を持ち合わせています。豊嶋康子さんの作品は、これまでみたことがあるものや仕組みが、見る人の想定する領域を超えた見え方を提供してくれます。
ひとつの部屋の側面を一周する「エンドレス・ソロバン」は、愉快さと狂気を味合わせてくれます。
今週の本
藤井聡太の指は震えない
諸事情によりこの本を手に取り、中身をほとんど調べずに読みました。藤井聡太の番記者である作者が、藤井聡太氏を8年間追いかけて書いた本です。
記者の人間臭さが伝わる、私の好きなタイプの本でした。しかし、Amazonのレビューでは酷い書かれようです。同じように番記者が書いた本でも、昨年読んだ中で一番良かった本「嫌われた監督」( 17通目 )はAmazonのレビューがとても高く、筆者の文筆能力で読者の受け取られ方に大きな差が出てしまうことに驚きました。どちらの本も、偉業を成し遂げたプロプレイヤーの8年間の軌跡を追うところまで一緒ですが、たしかに「嫌われた監督」の方が圧倒的に面白い。臨場感の差が大きそうです。
多くの本と出会い、読み比べることで、本当に面白い本を自信を持って人にすすめられるようになれそうです。
今週の音楽
Good Lies - Overmono
イギリスの兄弟ユニットOvermonoが2023年にリリースしたアルバムです。
アートワークには毎回ドーベルマンが使われています。撮影しているドーベルマンは彼らが飼い主というわけではない。攻撃的なイメージのあるドーベルマンを、遊び心ある写真で見せることで、固定観念の元にある優しさや実際の姿を見せようとしています( インタビュー )。
Good Liesもいいですが、私のおすすめはデビューするきっかけとなった fabric mix です。このmixに使う曲を探していたが見つからず、自分で作ってしまおうと考えたところから曲作りが始まりました。
今週のアプリ
Craft ( iOSのみ )
Craftはドキュメントやメモを書き留めるためのアプリです。
アプリ開発において、小さなスマホの1画面の中でテキストを編集する機能は企画・開発が難しく、こうした機能が必須となるメモアプリは、テキストの編集画面に各アプリの理念が現れやすいです。Craftでは、ボトムシート(iOSで画面の下から出てきて引っ張れる画面)を効果的に使い、テキストの編集を可能にしています。Craftでテキストのスタイル(フォントや色、サイズなど)を変更するには、文章を左右どちらかにスワイプするとメニューがボトムシートの形で現れます。馴染みのないUIで初めは戸惑いましたが、慣れると本当に使いやすくなります。メモアプリに特化した素晴らしいUIで、どんどん使いたくなります。
今週の映画
ゴーン・ガール( 10点中10点 )
ザ・キラー( 10点中10点 )
好きな監督であるデビッドフィンチャーの映画「ゴーン・ガール」を10年ぶりくらいに見直して、面白すぎて同じ監督の別の映画「ザ・キラー」も見続けてしまいました。デビッドフィンチャーはサイコパスの描写が上手すぎる。どの画面を取っても絵になる美しさです。
ザ・キラーの主人公が唱える独り言が格好良すぎて座右の銘にしたい。
Stick to your plan.
Anticipate , don’t improvise.
計画を守れ。
予測せよ、即興はするな。
おしまい。おやすみなさい、良い夜を!