ひとつ上の前提を見直すことができるか、46通目
会社経営が本当に難しいです。
会社経営は経営資源を最適に配分することであり、社長は全てのを経営資源に触れることができるとはいいますが、いうこととやることは別問題です。
私にとってデザインは、長年触れてきたこともあり、いうこともやることも簡単でした。今でも、社員や学生にデジタル上のデザインを教える際には「デザインを展開して打つ手がなくなった時は、ひとつ上の前提を考え直すこと。目の前のボタンの見た目をこねくり回すだけでなく、あるボタンのデザインをするにはそれが置かれる周辺を見て、その周辺をデザインするにはそれが置かれる画面を見て、その画面をデザインする際にはその前後の画面を見ること。そうやってひとつ上のレイヤーを追うと、ひとまとまりの繋がりをもつ、使う人に求められるデザインができるよ。」だなんて偉そうに話しています。
会社経営も同じで、あるプロジェクトをよりよく進めるために配置した金や人員の資源でできることを考え尽くし、それでも上手くいかなければ部署内での資源の配置を考え直し、それでも上手くいかなければ他部署も含めて会社全体で資源を最適化する。それでも上手くいかなければ、会社の方針から見直していくことが求められます。
デザインの考え方と同じはずなのに、なかなか気がつけない。「このプロジェクトは、以前配置したこの人員をどう行うべきか」「この企画は、昨年策定したこの予算内でどう収めるべきか」など、会社全体を見回すとより良い選択肢があるにも関わらず、一度決めたことを考え直すことから抜け出すことに苦労しています。前提がある方が楽で、逃げやすいからこそ、社長である私は絶対にそこだけに収まる考えを持ってはいけない。そう分かってはいるんですが、自分の気が付く速度の遅さに悔しくなる日々です。
デザインも経営も、根本の考え方は同じものばかり。「デザインはデザイン、経営は経営」と割り切らないようにしよう、とこのsubstackに宣言して気を引き締めていきます。
今週の写真
麻生台ヒルズで行われているオラファーエリアソン展で撮影した写真です。ひとつひとつの作品の出来が素晴らしく、この写真に写した《蛍の生物圏(マグマの流星)》という作品がひたすらに美しいです。「ただの照明だ」と一瞬で通り過ぎることもできますが、そうするにはあまりにも惜しい精巧な作りをしています。まだ期間があるので、迷っている方にはオススメします。
今週の音楽
Crash Recoil - Surgeon
サージョンの最新アルバムです。30年間のDJのまとめのような立ち位置とのことです。
Surgeonの作品では、2010年リリースされたfabricのDJmixアルバムが特にお気に入りで聞き続けています。なぜか「蔵前〜蔵前〜」から始まるハードなテクノの超おすすめアルバムで、蔵前に行くといつもSurgeonを思い出します。1曲目の入りと、18曲目辺りの盛り上がりが好きです。
今週のアプリ
Learn Chess with Dr. Wolf ( iOS Android )
45通目で紹介した本は中心にチェスが描かれています。チェスをプレイしてみたくなりアプリを探してみたところ、素晴らしいアプリを見つけました。今回紹介するアプリはチェスを練習するためのアプリです。Dr. Wolfというキャラクターがチェスを教える形で、人工無脳によるチャット形式でゲームを進行させることができます。
全体のデザインは洗練され、作りもよくできていますが、その中でもこのアプリのすごいところは、自分が一度プレイした内容に対して「悪かった手」をもう一度再現して打たせてくれる「Train」機能があるところです。チェスというゲームだからこそ「悪かった手」が判断しやすい(例えば、『駒を守れるのに守らない』とか『敵の駒をとれるのに取らない』とか)ため実現できる機能ではありますが、それにしても感動しました。「繰り返し立ち上げ情報を蓄積するもの」というアプリの性質に最高に相性の良い機能だと感じました。
この機能、他のサービスに導入できないだろうかと考えたくなります。「投資アプリで下手な買い方をしてしまった際」や「恋愛アプリで返信が返ってこなくなった際」など、「悪かった手」をもし判別できたら… ハードルは高そうですが、夢のある機能でした。
今週の映画
サスペリア (9点 / 10点中)
1977年の映画です。ディズニーの白雪姫に触発されたという鮮やかな色味の映像美と音楽、そして映画のために用意された美術セットのインパクトが凄まじいです。こんな映画、見た事ない。上述のインタビューにもありますが、『意味不明な冒頭の自動ドアの開閉シーンの差し込み』には見事という他ないです。
以上。
来週もスーパーハードな一週間になるので、しっかり寝て臨みます。