創業に携わった会社が買収された、28通目
私が大学生の時に休学をして創業に携わった会社が買収されました。創業時にデザイナーとして携わり、1年ほど手伝っていました。自分はその会社で、メインの創業メンバーだったにも関わらず、主体的ではなく手伝う感覚でいました。
短い期間でしたが、あまりにも刺激的で、一生忘れることのない時間になりました。自分たちのロゴや名刺を掲げ、サービスを作り、社外の賞でおだてあげられ勢いに乗るも、上手くいかず苦心し、苦渋の決断の末に私だけ先に会社を去ることにしました。私は創業時から寝食を共にした5人のメンバーのうちの1人だったため、先に退職するということは本当に辛い決断でした。退職は一生の別れを告げるようにも感じられ、シンガポールの定食屋で泣きながら退職することを告げたことを今でも覚えています。
私は、あくまで手伝っていました。主体的に取り組んでいたのではありません。そう書いてしまうことが今でも本当に悔しい。当時は有名なデザイナーになることを夢見ていたため、この会社を「携わるデザイン物のうちの一つ」として客観的に見てしまう自分がいました。たった5人のメンバーのうち、一人が主体的ではなく手伝っているという感覚を持ってしまっていたことは致命的で、あまりに罪深く、あの時に事業が上手くいかなかった理由は多々あれど、自分のせいでもあるという感覚は拭えませんでした。
会社を背負う覚悟と責任の重さ、友人への感謝
あれから10年以上経ち、私は別の会社を経営することになりました。今、誰よりも会社のことを考えて背負えているという自負があります。覚悟を持ち、責任の重さから逃げずに立ち向かえていることは、当時からの後悔が影響しています。経営者は誰よりも会社のことを想い、会社を背負う必要があるということを知りました。長年の時を経て、当時の後悔が日々の活力に活きています。
たとえ人から引き継いだ会社だとしても、もう客観的に見るような逃げ方はしません。当時の会社のメンバーに対して恥ずかしくないように日々を生き、私が誰よりも中心で会社を背負う自負を持ち続けます。
買収された会社の社長は同い年で、友人で、迷惑をかけてしまったことを後悔しているし、今でも心から尊敬しています。私が会社と向き合うときに「あいつだったらどうしてたかな」と今でも思うことがあります。
彼のおかげで私は会社に真摯に向き合えています。長年社長を務めた彼に、心から感謝と慰労を伝えたい。
今週の本
会社という迷宮
沖縄で心を打たれながら読んでいる名著中の名著です。私の中で、5本の指に入る心の支えになりそうです。「会社を背負う」経営者の仕事について書かれています。会社を経営するということに真摯に向き合い、苦労をした経験がある方に読んでもらいたい本です。付箋を貼りすぎて、全ページ貼る勢いです。読む人を選ぶ本だとは思いますが、今の私には「まさにこんな本が読みたかった」という内容しか書かれておらず、読み進めることが歯痒く辛い内容ばかりです。
冒頭で下記のようなことが書かれています。
(経営手法とか事例とかetc)そういったものは、この書には一切ない。ましてや、明日からどう行動するべきか、それを指南・啓蒙する「答え」らしいことも何一つ書かれていない。
ありがちな「明日から〇〇ができるようになるたった5つの方法」などということは一切触れられず、会社を経営するということがいかに混迷を極める迷宮なのか、会社を語る上で切り離せない単語(たとえば「利益」とか「市場」とか「組織」とか)の本当の意味を説明してくれています。読む度に背筋が伸び、会社への向き合い方を正してくれる本です。
経営で苦労している人におすすめし続けていこうと思います。
今週の写真
沖縄のコザの飲み屋に行く通路で撮影した写真です。コザは初めてではないですが、「宝島」を読み終えた後のコザはこれまでと異なる風景に見えました。
こちらは長期滞在中のホテルで、ファイブミニとビタミンレモンの瓶に、近くで購入した花を挿した写真です。数百円で素敵な気持ちになるので、長期滞在の際にオススメです。
今週の音楽
唾奇 × Sweet William - Jasmine
沖縄にゆかりのあるアルバムを聴いていました。沖縄出身のラッパーの唾奇と、ビートメイカーのSweet Williamのアルバムです。アルバムタイトルのJasmineは、唾奇の好きな「さんぴん茶(沖縄でのジャスミンティーの呼称)」から来ています。
どの曲も名曲で聴き続けている名盤ですが、特におすすめなのは3曲目の「白内」と7曲目の「Good Enough」。「白内」は Nujabesとshing02の名曲中の名曲 Luv(sic) part1 のトラックを再構築して作られた楽曲で、比較しながら聴いてもらいたいです。Sweet Williamのアレンジの仕方が最高です。
今週のアプリ
PictureThis - Plant Identifier ( iOS Android )
植物の判定をしてくれるアプリです。中国の杭州市の会社が提供しています。 上に載せた写真の花(ソリダコ、スターチス、霞草、鶏頭)は全て判別することができました。私は花が好きなので、名前を調べて覚えるためにこのアプリを使用しています。
このアプリの素晴らしいところは、日本人が作ったアプリではないにも関わらず、撮影した花に関する情報はもちろん、「文化」という欄で日本の俳句が見られることです。この機能からは、ただの多言語対応ではなく他国の文化に合わせようという姿勢が見えました。
全ての花に対して俳句が見られるわけではないですが、上の鶏頭を撮影した際は下記の俳句が表示されました。
鶏頭の十四五本もありぬべし - 正岡子規
花の種類や特徴、育て方などの情報はもちろん表示された上で、その国の文化に合わせた情報を表示できていることは素晴らしい配慮だと思います。
以上、今週は水曜日まで沖縄です。
またやーさい(またね)!