うなぎと過ごした98通目
突然ですが、年始早々、七日連続でうなぎ(うな重)を食べました。七日連続でうなぎを食べたことのある人間は、世界を探してもほとんどいないのではないでしょうか。
基礎を尊び学ぶこと
年末、会社の勉強会に電通の方をお呼びして、講演をしてもらいました。マーケティング職を専門とする方のお話で、広く知られている実績を元に仕事の話をしてくれたため社員の食いつきも良く、大成功の会となりました。社員に電通という会社の凄まじさを改めて知ってもらうことができ、ご招待して大正解でした。
「新たな企画に取り組む際は、必ずSTPマーケティングの手法に則り進めていて、プロジェクト要件や時代背景が複雑になっても基礎となる考え方は変わらない」というお話を通して、基礎を尊び学ぶことの大切さを教えてくれました。
予備動作
日頃から引き出しを増やしておくために「予備動作」を続けているという話がありました。仕事で突然大きなチャンスが来ても、いつも充分に準備する時間があるとは限らない。常日頃から周りのものに対して感覚を研ぎ澄まし、意識して収集し、自分の糧にしていくこと。そうすることで、突然打席に立つことになっても打てる可能性が高まるというものです。その「予備動作」の例として、「挨拶メールを収集し続ける」ことや「一週間同じものを食べる」ことなど、普通の人がやらないことをいくつか例として挙げてくれました。
この方は新人の頃に上司から「一週間とんかつを食べてレポートして」という指示をもらったそうです。実際にとんかつを五日連続で食べ、とんかつの味にとても詳しくなったとのことでした。
この「予備動作」のお話が印象に強く残り、私も試すことにしました。それが、うなぎです。せっかく連続で食べるなら好きなものにしようと思い、うなぎを選びました。
うなぎを七日連続で食べる、うなぎチャレンジ
年始で時間が取りやすいうちに、うなぎチャレンジを行いました。一言で言うと、美味しすぎました。
以下、うなぎチャレンジの簡易レポです。
・うなぎは美味い(七日目でも最高でした、毎日食べたい)
・うなぎは高い(二日目で選んだことを後悔しました)
・輸入品でも焼き方で美味くなる(一番香りを楽しめたうなぎはまさかの中国産)
・うざくは各店舗の創作力に差が出る(うなぎ屋ではうざくを頼め)
・最もコスパが良いうなぎは吉野家(安くて美味い)
・駅で売ってるうなぎ弁当は頼むな(一番不味い、コスパが悪すぎる)
・自分にとってうなぎの満足度を変える大きな変数は「うざくがあるかどうか」と「うなぎの大きさ・厚さ」
吉野家の安いうなぎから高級うなぎ屋まで、ひたすらうなぎと向き合いました。二日目のうなぎ屋で一人で8000円以上払って「私は一体何をしているんだろう」という気持ちにもなりながらも何とか自分に打ち勝ち、心折れることなくうなぎを食べ続けることができました。
うな重よりうざくの方が趣深く、店によってはミョウガが乗っていたり、きゅうりとうなぎが分離した形で出てきたりと、味だけでなく見た目も含めて楽しむことができました。あと、自分はきゅうりが好きなんだということを改めて知りました。
うなぎを七日連続で楽しむとどうなるか
これまでは「美味しい」としか感じていなかったうなぎに対して、さまざまな想いを持つことができました。自分の満足度を大きく変える変数を理解することは、理解力と説明力をつける良い訓練になりました。そして、「七日連続でうなぎを食べたことのある人間は、世界を探してもほとんどいなそう」という考えが、自分が身につけた新しい地位として、ほんの小さな自信に繋がりました。自己肯定感を高めたい人にも良いきっかけになるかもしれません。
自分一人だけで美味しいものを味わいにお店を訪れる経験がほぼなかったため、スマホも開かずに一人黙々と目の前の料理と向き合うことはとても楽しめました。また別の料理でも試してみたいと思います。
今週の写真
早くも2025年ベストアートの気配があります。オペラシティアートギャラリーで行われている今津景の展示の写真です。私が頻繁に行くフェスFFKTのメインビジュアルに起用されていたことがあり( フェス運営の方のインタビューで少し触れられています )、そこから好きになりました。
一つ一つの作品が複雑で絶妙なバランスの平面構成で美しく、見ていて飽きさせない様子がとても好きです。絵画がとても大きいので、生で見る価値のある作品群でした。
今週の音楽
At The Drolma Wesel-Ling Monastery - Howie Lee
チベット密教声楽を再解釈した電子音楽アルバムです。ディスクユニオンの年間ベストアルバム大賞2024アジア部門にも選ばれている一枚です。Howie Leeは他のアルバムもいくつか聞いていましたが、今回のアルバムが一番怪しくてインパクトがあります。1曲目が最高でした。
今週のアプリ
ECサイトを一元で扱えるようになるアプリです。ECサイトの大手プラットフォームを手掛けるShopifyが手掛けています。
全体的にこれ以上ないほどにサクサク動き、多くのアプリの中でも特に良くできていそうな印象を受けました。あるブランドでは、公式サイトより使いやすいです。プラットフォームのサービスとなると使いにくいものだらけですが、真のプラットフォームサービスはこうあるべきだと強く思わされた素晴らしいアプリでした。
今週の本
春琴抄(1951)
年始一冊目は、年末に人にオススメされた小説です。耽美主義という美を追い求めた芸術思潮の本です。名作と呼ばれるものはやはり面白い。たったの150ページ程度であるにも関わらず、極端なマゾヒズムの表現に当惑しながらもいつの間にか没入し、物語のピークとなる目を潰すシーンには思わず声が出そうなほど感情が高ぶりました。
うなぎ。
(谷川俊太郎の名訳より。スイミーに書かれているたった三文字の体言止めの一行。オリジナルは普通の文章ですが、谷川俊太郎は句点を用いて独特の世界観を作りました)
来週は新潟スタートです、おやすみなさい。良い夜を。