ムーアの法則の限界
先日、iPhone14 Pro Max から iPhone16 Pro Max へ乗り換えたのですが、進化があまりになさすぎて落胆しました。私はiPod Touch時代からiOS向けのアプリを作り続けて15年になりますが、とうとう端末の性能の違いを感知できなくなりました。これまでは端末を買い替えるたびに、性能の向上によるUIの触り心地の滑らかさや、追加される新しい機能の数々にワクワクする体験をしてきました。前回購入したiPhone14 Pro Maxのときも「さすがにもう進化はしないんじゃないかな?」と思いながらも触ってみると、画面の切り替わりのあまりの円滑さに感動した覚えがあります。ダイナミックアイランドもAppleならではのUIで魅力的でした。
しかし、今回のアップデートは異なります。性能の向上による触り心地の変化は、全くと言っていいほど感じられませんでした。むしろ、ベゼルが狭くなった分、打ち間違えが増えました。今のところ、いいところが何もなく、交換したことを後悔したほどです。これから実装される予定のAIも、ClaudeとChatGPTで充分なのではないかと感じています。
ムーアの法則にもあるように、スマートフォンは短い間に大きな変化を遂げましたが、デバイス側より先にスマートフォンを使用する人間側の円滑さを感じる能力で限界が来たのかもしれません。デバイス側、つまり半導体で物理的な限界を迎えると思っていましたが、まさかの先に人間の感じ方で限界が来るとは思いもしませんでした。どんなに性能を高めて滑らかに動いても、もはや人間が体感できないところまで来てしまったのかもしれません。長年スマホとアプリに携わってきた私にとって衝撃的な出来事でした。Androidではpixel7aを利用していて、まだ引っかかりを感じているため次の端末購入が楽しみですが、iOS側はしばらく端末を交換しなくなりそうです。
これからの世の中では性能を比較する価値が下がり、デバイスへの関心が薄れていくことで、デバイスの中身、つまりOSやアプリのような体験価値への関心がより高まる傾向になりそうです。私の会社が成し遂げようとしていることの価値が高まりそうで、スマホの進化には落胆しつつも、これからの世の中が楽しみになりました。
今日の写真
東京都現代美術館で行われている坂本龍一の個展「音を視る 時を聴く」を見た際の写真です。正直なところ、作品群はあまりピンと来ませんでした。人が多過ぎたこともあるかもしれませんが、私はメディアアートより「モノ」のアートの方が好きなんだと再認識させられました。機会があれば、平日人が少なそうな時に再訪してみます。
今回の展示の中で一番印象に残ったものは、アーカイブと名付けられた展示室に置かれていた、1996年の雑誌のインタビュー記事です。
今みたいな、情報に対する奴隷状態の中で、メディアが多様化したからといって、人間の創造性が高まるという保証はどこにもない。10年前と今の音楽状況を比べてみたって、10年前のほうがクリエイティブだったということだってあるわけだしね。
(略)
だから「情報」じゃダメなんだ。「情報」そのものでは「美」にならないんだよ。
(略)
やっぱり芸術や美には、郷愁とか、記憶の中にある風景とk、匂いとかをリアルに呼び起こす力がある。インターネットもそこまで行かないと本当のメディアとは言えないと思うよ。
先を見通した発言に震えました。音楽に限らず、すべての創作活動に言えそうです。今の時代では民度の低いSNSの広がりやAIの濫用によって、むしろ昔より創造性が下がっている可能性すらあります。坂本龍一がとても好きになりました。
今日の音楽
坂本龍一 - /04 /05 (2024 Remaster)
私はこれまで、坂本龍一の曲をアルバムとして聞いたことがありませんでした。substackで購読している方の記事に出てきて、「そういえばほとんど聞いたことなかったな」と思い再生してから、すっかり魅了されてしまいました。
戦場のメリークリスマス、見直します。
今年は会社の仕事を早めに終え、残りは全社員の賞与の最終確認をして仕事納めです。早くも頭角を出し始めている1年目2年目の若手社員がいることが何より誇らしいです。
今日は病院のファミリールームからお届けしました。明日は嫁の出産予定日で、しばらく病院で一緒にいるつもりです。
おやすみなさい。