マーケティングの講義
ご縁があり、新潟大学の学生に向けて講義をしました。講演の間にワークショップを挟む2時間半の長丁場の講義でした。
元々マーケティングに詳しい別の会社の社長が登壇する予定が急遽参加できなくなり、私のところに「会社で取り組まれているマーケティングについて触れて欲しい」というお題つきで依頼が来ました。正直なところマーケティングの門外漢な私に対応できるか相当不安ではありましたが、準備して臨んだ甲斐もあり、講義後は学生や教授、依頼してくれた方々に十分喜んでもらえていそうで安心しました。
あまりに門外漢だったため、マーケティングの定義を調べるところから始めました。マーケティングとは「顧客や社会と共に価値を創造し、その価値を広く浸透させることによって、ステークホルダーとの関係性を醸成し、より豊かで持続可能な社会を実現するための構想でありプロセスである。」とのことです。まず、定義を定める団体がいることに驚きました(デザインも誰か定義してくれよ、と思いたくなります)。これを見て思ったのは「マーケティングとはサービスを売る、お金を使うだけではないんだ」ということ。マーケティングの定義は2024年に新しくなっており、やはりその点が大きく変わったうちの一つとのことです。
次に、マーケティング関連で触れた文献を考え、読んだことのある「USJを劇的に変えた、たった1つの考え方」という本を思い出しました。タイトルにもあるたった1つの考え方というのは「消費者視点もつこと( ≒ ユーザー視点をもつこと)」であり、つまりユーザーが本当に欲しがるものを届けることがUSJを変えたという本でした。ユーザーが本当に欲しがるものを届けるということは、私の会社で最も力を入れていることであり、マーケティングという言葉を使わずとも素でやれている部分がありそうだと思い始めました。
私の会社では、営業のみならず採用や文化醸成のためのブランディングを最大限活用して、まさに前述の定義に当たるマーケティングをしています。幸いにも順調に成果が出てる上に、費用はほぼかけずにここまで成長することができました。こうした体験をもとに、私の会社で費用をかけずにブランドを構築することでマーケティングを実践した事例と、実際の課題を与えてブランディングについて考えさせるワークショップを行いました。前述の本の中で「マーケティングの最大の仕事は消費者の頭の中に選ばれる必然を作ること」という記述もあり、良いワークショップを提供できたのではないかと思います。
デザインは広範囲を抑えられる学問であり、知らない領域でもデザインの共通点を見出して理解を深めていき、自分のことばに変えていく。そうすることで、別の領域でも充分話せる方法があると改めて感じました。
サンノゼの友人と電話
週末にサンノゼで働くデザイナーの友人と話しました。彼とは大学で出会い、年が離れていたためデザインのレビューをすることがありました。彼が13年ほど前にデザインしたロゴをたまたま札幌出張中に見かけて感動し、久しぶりに連絡をとり、話すことになりました。そのロゴのデザインは、当時私がデザインのレビューをしたものでした。どんなレビューをしたか、何故か覚えていたのですが、彼も私のデザインレビューを覚えてくれていました。「ロゴマークの外側の線を太くしたことで、急に印象が変わって引き締まったことを今でも覚えている」と、仔細に覚えていてくれたことが何よりも嬉しくて、昔の話で盛り上がりました。
当時のレビューを振り返り、「レビューを覚えてるということは、やっぱり教えるのが上手いからだと思う。感覚ではなくて(どうしてそう変えるのか)論理立てて説明してくれたからだと思う。」とベタ褒めされてしまい、なんだか恥ずかしくなりました。
彼は新卒で日本の電機メーカーに入り、転職して今はアメリカの玩具メーカーでプロダクトデザイナーとして働いています。そんな優秀な友人にデザインを教えていたことを恐れ多くも思いますが、それでも、自分のレビューが優秀な彼に影響を与えていることを誇りに思いました。
友人との会話の中で、自分がデザイナーから社長になり日々もがきながらも前に進んでいること、同規模以上の会社でデザイナー出身の社長がいないことなどを話していたところ、友人から面白いお願いをされました。
「その立場を活かして、他の会社の社長にデザインを教えてほしい。それがデザインの底上げをする一番の方法だと思う」
私の夢は、デザインの価値基準の底上げです。そのためにも、デザイナーだけでなくエンジニアや他の職種、さらには学生のうちにデザインの大切さを教えることで価値基準の底上げができると考えていました。しかし、友人のような企業で働くデザイナーからすると、デザインの力を信じない社長が創造性を抑えてしまうため、会社のトップにデザインの重要性を伝えることで、社会が大きく変わるのではないかと話していました。会社のトップである社長には、他の会社の社長からしか話を伝えることができないため、デザイナー出身の社長というポジションにいる存在がとても貴重なんだと話してくれました。
新たな野望「社長にデザインを教える」
小さい頃は数学の先生になりたいと思っていました。途中から、何だかかっこいいからという不純な動機でデザインを志すようになりましたが(デザインに大ハマりしたので結果オーライでしたが)、人に教えることが本質的に好きなのかもしれません。新潟大学での講義は満足感が大きく、デザインのレビューも喜んでもらえたことが誇りであり、この週で自分の根源的な気持ちに気がつけたように思います。千葉大でも筑波大でも数年授業を続けているのは、教えることがとても楽しいからなんだと思います。
「他の会社の社長にデザインを教える」。新しく成し遂げたいことができました。ハードルが高いことではありますが、これができれば、日本や世界のデザインの底上げに、少しでも貢献できるかもしれません。チャレンジする価値がありそうで、ワクワクしてきました。
今週の写真
エスパス ルイ・ヴィトン東京で開かれているウェイド・ガイトンによる個展「Thirteen Paintings」を見た際の写真です。ガイトンの個展は日本初とのこと。20年以上に渡り同じコンセプトで作り続けられた作品群の洗練され具合は、目を見張る美しさがあります。
平面の美術作品は日光で変色したり傷んだりすることを避けて飾られることが多いため、日光をふんだんに取り入れた展示方法は新鮮でした。色味もサイズ感も抜群、全ての作品の中心に切れ目が入っているところが統一感のある美しさを醸し出していました。
おすすめの展示です。
今週の音楽
In Parallel - Salamanda
韓国ソウルの女性二人組ユニット、サラマンダの4枚目のアルバムです。優しいサイケデリックなアンビエントエレクトロミュージックです。アートワーク通りの浮遊感と明るさのある素敵な作品です。
筆が進まず、力尽きました。変な文章だったら明日直します。
毎日時間に余裕のない日々ですが、元気にやっていきます。
おやすみなさい、良い夜を!