今週の本
樅の木は残った(中)
先週から引き続き、山本周五郎の小説を読んでいます。「上」を読み終えたことでだいぶ読みやすくなりました。
主人公の原田が藩を守るために、忍従を装いながら、ひとり策略に立ち向かう話です。主人公が周りの友人や知人に自分の考えを打ち明けないため、孤立が進みます。味方になることを申し出た人を軽くあしらったあと、主人公が鏡の前で皺と白髪が増えた顔を見て「ひどい荷を、背負ったものだ」とつぶやく様子は、いたたまれない気持ちにさせます。
小説を読み進めながら、主人公の立場をどうしても自分の立場に重ねてしまいます。私が今抱えている仕事はどれも周りに話せない仕事ばかりです。困難な状況にあっても共感を求めず、従容として振る舞い、まさに忍従を装いながら自分の決意をぶらさず強く持ち、思い描く方に淡々と着実に進めていくしかありません。
経営判断は、合議ではなく独任で決めるべきことばかりです。今も、今週中にも私が決め切らなければならないことをいくつも抱えています。一度決めてしまうと簡単には覆せず、数年にわたり影響を及ぼすことばかり。どれも初めてのことばかりですが、分からないではすまされない、あまりに重たい判断の連続です。
主人公の原田ではないですが、つい「ひどい荷を、背負ったものだ」と言いたくなるような日々を送っています。
今週の写真
DIC川村記念美術館に行った際の庭園の写真です。お気に入りの美術館で、10年以上通っています。千葉県佐倉市にあり、私はいつも東京駅から直接美術館まで直行でいける1日1便のバスを利用しています。
展示室は撮影禁止のため今回は庭園の写真だけ。企画展であるカールアンドレの作品は他の美術館で何度か目にしていましたが、今回は多くの作品を一度に見られる初めての機会でした。空間を大胆に使った展示は贅沢でした。詩の方の作品はあまり好みではなかったため、大型彫刻がもっと見たかったというのが本音のところでした。
今週の音楽
Secret Garden - μ-Ziq & Mrs Jynx
アートワークが美しすぎる今回のアルバムは、μ-ZiqとMrs Jynxの共作アルバムです。二人とも親を癌でなくし、その経験を互いに励ましながらアルバムを制作していました。μ-Ziqらしい音が感じられつつも、ノンビートな曲があったり和らかな音が広がったり、悲しみと温かさの伝わる心地よい1枚です。
今週のアプリ
東急株式会社が提供する、地域共助プラットフォームのアプリです。東急線沿線の周辺地域で利用することができ、近所の方々とのゆるいつながりを持つことができます。
最近はどのSNSもつまらない内容が回ってくるようになり、私はInstagramもXも見ることをほぼやめてしまいました。きっと私だけでもないはず。そうした中で、匿名だけど近くに住んでいる方とのつながりを持てることは、現代的なコミュニティの新しいあり方を提供してくれる素晴らしいアプリだと感じています。
このアプリの良いところは、トップ画面上部に大きな余白があるところです。余白は、簡単に作れるものではありません。小さな画面に複雑な機能を押し込む必要のあるアプリというものは、簡単に画面中を機能で埋め尽くしてしまいます。PayP◯yを開いてみてください。強い意志と哲学がなければ、アプリの中に余白を作ることはできません。余白はユーザーに余裕を与えてくれます。
このアプリのユーザーは、commonの独特の世界観が好きだと感じている方が多くいるようで、アプリの中でも実際にそうした投稿があります(本当に素晴らしいアプリだと思います)。その世界観を構成するものは、提供するサービスの内容であり、色であり、フォントであり、挙動ですが、commonの場合は「余白の与える余裕」が大きく影響しているのだろうと考えています。
みなさんが普段から使用する好きなアプリは、余白がありますか?
今週の映画
グレイマン( 2022 ) 10点中6点
シャッターアイランド( 2010 )10点中6点
グレイマンはタイラーレイクと同じ監督のルッソ兄弟の作品です。納得する激しさでした。最後の方でシャイニングと同じような迷路の庭園が出てきて笑ってしまいました。シャイニングの影響力は凄まじい。シャッターアイランドは展開がいかにも小説的であんまり面白くないかなと思いつつ見ていたものの、後半から楽しくなります。もう一度見たくなる映画。最後のセリフの重みが素晴らしい。
Which would be worse? To live as a monster or to die as a good man?
どっちがマシかな? モンスターのまま生きるか、善人として死ぬか?
難しい日本語は、GoogleではなくClaudeで「〇〇で例文を作って」と尋ねるほうが便利ですね。広告も出ないし。
おやすみなさい!