最終面接で詰まる言葉、切り離された瞬間
私は最終面接は必ず全て出席しています。今週は来年の新卒の面接が2件ありました。そのうち1つの面接の最中に、質問する側のこちらの頭が突然真っ白になってしまい、言葉が出てこなくて焦る場面がありました。顧客から株主、提携先に社員など、毎日のようにさまざまな立場の人と話すため、頭の切り替えが大変です。最近は特に打ち合わせが詰まっていたこともあり、面接の最中に別の仕事の考えが頭をよぎり、言葉に詰まってしまいました。
面接の際に候補者は緊張していることが多いですが、こちらも毎回緊張しています。エンジニアやデザイナーなど、つくり手が引く手あまたなこのご時世で、与えられた時間の中で会社を選んでもらえるように面接官は最大限惹きつけなければなりません。何を話したら今回の候補者の方は入りたい会社だと思ってもらえるだろうか、毎回候補者ごとに想像しながら臨んでいます。
そのような中、今回は別の仕事のことが頭から離れず、言葉が飛んでしまいました。会社の印象は社長の印象と密接に関わり、特に面接に社長が出席した場合はなおさらです。。今回の候補者の方には、他にも印象に残りそうな話を多く出来たつもりではありますが、「最終面接でなぜか言葉に詰まった社長の会社」だと認識することになったことでしょう。みっともない姿をさらしてしまいました。
わざわざ会社に足を運んでくれる候補者に満足してもらえるよう、失礼がないように、面接の前は「5分だけでも一人になる時間を必ず作り、全神経を相手に向けよう」と、改めて考え直した週となりました。
面接は、する側も難しいです。ほんとうに。
今週の写真
東京都現代美術館で行われている「Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展」のサエボーグの作品を撮影した写真です。サエボーグさんはラテックスで作られた独特なデザインのボディスーツを用いたパフォーマンスを行う芸術家です。写真に写した犬もそうです。
平日に訪れたため、大きな美術館の部屋の中に、自分と犬と監視員と、たった3人になる時間がありました。犬と見つめ合いながら、無言のまま5分以上その場に留まりました。人が中にいると分かっていても、演じられている犬と無言で見つめ合う時間は、世俗から切り離されたような、緊張感と安心感が同時に感じられる貴重な体験となりました。
人がいながらにして静寂を楽しめる機会は、普段なかなか得られません。会社でも、電車でも、家でも。何かしらの規則や共通の認識がない限り満たされません。美術館は、静かであることを求められる数少ない心地よい場として、毎回楽しんでいます。
今週の本
樅の木は残った(上)
本が好きな社員に(はるか昔に)薦められて、読み始めました。普段読まないジャンルのためとにかく読む手が止まり、一冊読み切るだけでも大変でした(まだ「中」と「下」がある)。主人公の名前だけでも「原田」や「甲斐」や「船岡」など複数あり、どれが地名でどれが本名かも分からず主要登場人物一覧を戻って見直したり、昔の難しい日本語表現が多いので調べるために本とスマホを行き来したり(「奸譎」「斬奸」「譴責」「扈従」など)、時間がかかる本でした。
小説では、性的な場面の描写に小説家の実力が現れやすいと感じます。例えば『樅の木は残った』ではこのような表現がありました。
綿のように軽く、温かく、柔軟な重みが彼を包み、彼を押え、緊めつけ、痺れさせてしまう。彼は落ちてゆき、舞い上がり、快楽の中で引き裂かれる。
簡易な日本語だけで、良くこんなにも複雑な感情を表現できるなと感服します。
本を勧めてくれた社員が「何度も読み直した」と話していたことが納得できました。科目な主人公の立ち振舞いや所作が魅力的で、人から好かれる剛毅木訥な様子に憧れを感じます。「中」と「下」を楽しみに、また明日から過ごします。
今週の音楽
At Disconnected Moments - STL
良いアルバムはアートワークも良いです。このアルバムは、ドイツの気鋭のプロデューサー、Stephan Laubner(STL)が2014年にリリースしました。おすすめの曲はシングルカットされた6曲目の「Silent State」で、静かな空間を感じさせるテクノです。
今週のアプリ
NHL、ナショナルホッケーリーグの公式アプリです。アプリの中身自体は良くできているわけではなく普通のアプリですが、このアプリの良いところは導入画面で好きなチームを選ばせて、アプリのアイコンを好きなチームのロゴに変えられるところです。好きなチームのロゴをホームにおける事ほどファンにとって嬉しいことはありません。アプリの利点を最大限活用した機能は、アプリ業者が取り合うホームの1画面めにこのアプリを置くことに一役買うことでしょう。
ただし、この機能は現在iOSにしか対応していません。ユーザーが任意のタイミングでアプリのアイコンを変えられるようにする機能はAndroidでも技術的には実現可能なため、NHLのファンのためにいつかAndroid側にも実装されることを願います。
今週の映画
タイラーレイク( 2020年 )10点中8点
タイラーレイク2( 2023年 )10点中7点
『タイラーレイク』シリーズは、20分近くに及ぶ長回しの激しいシーンが特徴です。つなぎ目が全く分からないほど巧妙に撮影されており、カメラワークの工夫に驚かされます。あまりに凄すぎて何度か巻き戻して見返しました。お金の掛け方が凄まじいです。ストーリーは普通ですが、長回しのシーンのためだけでも見る価値があります。
イスラム系のヒロイン、ゴルシフテファラハニが格好良すぎ。前に見たはずの映画『パターソン』にも出ていたらしいのですが、あまり記憶にない。
おしまい!よい夜を〜